子守唄研究室
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ねんねこ通信

タイトル:ねんねこ通信82号
日付:2016/10/25(火)

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 ねんねこ通信 82号 2016.10 http://komoriuta.cside.com/
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◎目次

●高齢者と体力

●大分県の子守唄

●コラム−吉四六(キッチョム)さんの話

●編集後記
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◆高齢者と体力
 先日のニュースで知ったのですが、高齢者の体力は年々伸びてきているということ
でした。確かに私が通っているスポーツジムでも、80代の方のはつらつとした姿が
多く見られます。しかし何にでも例外があるように、平均値をみて鵜呑みにするわけ
にはいきません。その証拠に毎年高騰する医療費があります。体力測定に参加できる
人はそれなりに健康でしょうから、程度の差こそあれ数値は出ます。高齢者を褒めて
また何がしかの政策を考えているのでしょうか。政治家や役人の将来の生活は、高額
な年金で保障されているでしょうけれども、図らずも貧困から抜け出せず憲法で保障
されている「健康で文化的な最低限度の生活」さえ出来ない人も多いのです。
 このところ政治や行政に何となく不信感を持ってしまったので、その裏には何があ
るのだろうと勘ぐってしまう私がいます。
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◆大分県の子守唄

 ギッコショ マッコショ まだ米ゃすれんか
 糠こそすれた 箕を持ってこい してこましょ
 ヤッシッシ ヤッシッシ
 ※両足を投げ出して座る幼児の両手を持ち、うたいながら交互に引き合う、臼のヤ
 リ木を押したり引いたりする籾摺りの様子を真似た遊ばせ唄です。
 
 フーラにいれ にいれよ とたんが ふねえの じょうき出ち
 せんぴとふうすきゃ 買うてやる
 フーラにいれ にいれよ 泣くとわんわんが ついちくるぞ
 フーラにいれ にいれよ 
 ※方言まる出しの唄です。解説によれば「ほーら寝いれよ、父ちゃんが府内(現在
 の大分市)に行って、煎餅とほおずきを買ってあげる。泣くとお化けがついてくる
 ぞ、ほーら寝いれ、寝いれよ」と。
 
 心せくより 川堰きなされ 川にゃ思いの 鯉がおる
 あら嬉しゃ だいだい熟れた わしの帰るのも 近よりた
 明日は帰ります どなたもさらば 長くお世話に なりました
 親が貧すりゃ 緞子の帯を 買うてやろやろ 口ばかり
 泣いてくれるな 泣かんでさよも 尻をひねるよに 思われる
 ※住み込みの年季奉公に出すと、はなにがしかの給金が親の手に入ることや、口減
 らしにもなります。子供たちには食事と「仕着せ」が与えられますが、子守は辛い
 仕事です。この子はだいだいが熟れた頃に約束の年季があけるのでしょう。
 
 食べてみらんせ他人の飯をヨイヨイ 骨はなけれど喉にたつよヨイヨイ
 金が欲しけりゃ鳥島女島ヨイヨイ 命欲しけりゃ通われぬヨイヨイ
 巡査ごめんなれ守りの衆の歌をヨイヨイ 守り衆ゃ唄にゃ日がたたぬよヨイヨイ
 親のない子は磯部の千鳥ヨイヨイ 潮が干りゃ鳴く満ちりゃ鳴くヨイヨイ
 こない泣く子はくれたちいらんヨイヨイ くるりゃ茶の木の肥にするヨイヨイ
 このか泣かんいうてわしが守り来たらヨイヨイ 何が泣かんか泣きくらすヨイヨイ
 ※守り子唄です。鳥島女島の所在はわかりませんでしたが、ここにはお金が稼げる
 仕事があるのでしょうか。でもそれは命がけのようですね。
 
 あん子つら見よ目は猿まなこ ヨイヨイ 口はわに口えんま顔 アヨーイ ヨーイヨー
 お前つら見よぼたもち顔よ ヨイヨイ 黄粉つけたらなおよかろ アヨーイ ヨーイヨー
 いらん世話焼く他人の外道 ヨイヨイ 焼いちよければ親が焼く アヨーイ ヨーイヨー
 いらん世話でもときどき焼かにゃ ヨイヨイ 親の焼かれん世話がある アヨーイ ヨーイヨー
 ねんねねんねと寝る子はかわい ヨイヨイ 起けち泣く子はつら憎い アヨーイ ヨーイヨー
 憎みゃしませぬ大事にしますヨイヨイ とぎじゃとぎじゃと遊びますアヨーイ ヨーイヨー
 山が高うち在所が見えん ヨイヨイ 在所かわいや山憎や アヨーイ ヨーイヨー
 ままになるなら在所を山に ヨイヨイ 山を在所にしてみたい アヨーイ ヨーイヨー
 ※「宇目の唄げんか」です。夕方になると雇われ子守りたちが村の広場に三々五々
  集まり二組に分かれ「送り」「返し」と交互に唄を出し合い、唄が続かなくなっ
  た組が負け、という遊びです。相手方の守子の顔を揶揄し挑発すると、すかさず
  やり返す。そんなことで背負った赤子の重みを忘れようとしているのでしょう。
  守子たちの生きるたくましさを感じます。
  
 哀れなるかなぼた餅は 搗くかれて揉まれて叩かれて
 切ない茶碗に山盛られ 喉の細道通りすぎ
 お腹で一夜の宿を借り 明日は臭いの甕の中
 ※ぼた餅が口から入って食道を通り、胃や腸で一晩かけて消化され、翌日便となっ
  てカメに出される、という食物の一連の流れを唄っています。面白いですね。 
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◆コラムー吉四六(キッチョム)さんの話
 吉四六は大分県で伝承されている民話の主人公。実在の人で名字帯刀を許された地
方の庄屋で廣田吉右衛門という人物です。話の内容は彼の伝記ではなく、明治時代以
降に大分県中南部の伝承を集めて編集されたもので、その過程で脚色や創作が加えら
れています。話数は二百話以上あるようですが、少し紹介しましょう。
『柿の見張り番』家の柿がたわわに実ったので取られないように見張っているように
言われました。友達が遊びにきてそそのかされ、皆で柿を全部食べてしまいました。
畑仕事から帰ってきた親に叱られたのですが「柿の木は見ていたよ」と。
『甕のの値段』妻に頼まれてカメをかいに行き、小さいのを30文で買って帰ったと
ころ小さいから大きいのをと。彼は店に行って60文のカメを持ち帰ろうとしたが、
店主にまだお金を貰っていないと言われて「昨日30文はらって、今30文のカメを
戻したから合わせて60文だ」この話は「壺算用」という落語にもなっています。

 一休さんや彦一さんと並ぶ日本の三大とんち話の吉四六さんが、大分県の伝承民話
だとは知りませんでした。ちなみに一休さんは室的時代の僧侶「一休宗純」の愛称。
彦一さんは熊本県の伝承民話です。 
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◆編集後記
 東京の築地市場移転の件で、色々な問題が出てきました。都庁と都議会は協議を重
ねていたはずなのに、どこかに誤魔化しがあり紛糾しています。都民は何も知らされ
ていませんでした。その上オリンピックの事でも問題が山積しています。小池都知事
の手腕が試される時なのでしょうが、これまでの関係者の無責任さが問われます。
 夏の間ツルだけ伸びていた朝顔が蕾を付けはじめ、今朝一輪咲きました。これから
どんどん咲きそうですが、低い気温に耐えられるのでしょうか。ちょっと心配です。

 いま鳥取県で大きな地震がありました。震度6弱だそうです。近くにある原子力発
電所は無事なようですが、地震大国日本に、原発は不安が多いですね。(10月21日)
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