子守唄研究室
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ねんねこ通信

タイトル:ねんねこ通信101号
日付:2019/12/29(日)

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 ねんねこ通信 101号 2019.12  http://komoriuta.cside.com/
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◎目次

●男女格差(ジェンダーバイヤス)
 
●中世に生きた母と子

●コラム−今年の漢字

●編集後記
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◆男女格差(ジェンダーバイヤス)
 世界経済フォーラム(世界の政財界の指導者を集めた「ダボス会議」を主催する国
際機関)の報告書で、日本は153カ国中121位との発表がありました。昨年は110位でし
たので過去最低の順位になりました。政府は「女性の活用」などと声高に言っていま
したが、経済・教育・健康・政治の4分野で一番低かったのが政治で144位(昨年は
125位)です。100点満点中4.9点でした。政治への女性進出が非常に遅れている状況
が浮き彫りになりました。このままでは日本は国際社会から取り残されるのではない
かと危惧されます。経済は115位、教育は91位、健康は40位でした。
 ちなみに1位はアイスランドでノールウェー、フィンランド、スエーデン、ニカラ
グアと続きます。アイスランドは2年連続です。
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◆中世に生きた母と子
 子を人質にして身を守った母ーこんな話が今昔物語に載っています。『若い女が子
どもをおんぶして山道を歩いていると、二人の乞食に出会った。すると一人が女に抱
きついてきて山の中に引き込まれてしまった。言うことを聞くから手荒なまねはしな
いでくれ、今朝から腹をこわしているので用を足させて欲しいと懇願した。逃げたり
しない証拠に大事な子どもを人質に置いておくと言って乞食を納得させた。女は用を
足すふりをして、一目散に逃げだした。ようやく道に出た所で四・五人の武士に出合
った。走っているわけを聞かれたので、事のいきさつを話した。武士たちが現場に行
ってみると、そこには乞食はおらず無残にも引き裂かれた子どもの遺体があった。子
どもを犠牲にしても身を守った母親の行為を、武士たちは褒め讃え評価した。編者も
「庶民でも恥を知っている者がいるのだ」と書き添えています。』
 このことから、子どもを背負った若い女性が、一人で山道を歩いていたことが分か
りますが、他の記録からも中世には女性の一人旅が多かったことが記されています。
 それにしても考えさせられる話です。人通りの少ない山道で助けを期待できない時
乞食の要求を受け入れたとしても、母子ともに殺されてしまうかもしれないとか、こ
の女のように自分だけでも生き延びようとするか、ほかにどのような選択肢があるか
考えてしまいました。

上級役人の厨房で働く母ー『厨房で働いていた下女が病気になったので追い出したら
死んでしまった。その女は子ずれだったので童女は頼るところもなく、家の周りをう
ろついて物乞いをしていた。毎日のように来ていたが、死相が見えてきたので追い出
されてしまった。翌日から姿が見えないので犬に食われてしまったのだろう。』「穢
れ」を嫌ったので死者がその家から出るということは一大事です。「家」に関係のな
い雇人は病気になったら厄介者、追い出されてしまうのです。住み込みで働く女性の
夫は登場していません。どのような境遇だったのでしょうか。身寄りのない病人や子
どもは川原や道端に捨てられ、犬や鳥に食われてしまうことが多くあったようです。

 貧女の捨て子を養った女ー『乳母として働いていた女性が、その用も終わり仏教に
帰依していた。ある日、貧しい家の軒先で雨宿りをしていたら、その家の女房が泣い
ていた。二人の子どもがいるが仕事の都合で二人を連れては行かれない。貧しくて乳
母を雇うこともできないので、一人を捨てて行こうかと思うが、それが出来なくて泣
いているのだという。女は「一人を私に下さい」といって連れ帰った。乳が出るわけ
でもないので思案していたが、しなびた乳房を吸わせていたら、なんと乳が張りこぼ
れるほど出るようになった。この話を聞いた人々は信仰の賜物だと語り継いだ。』母
性がよみがえり身体に変化をもたらしたのでしょうか。めでたしめでたしです。

 今昔物語に出てくる話です。十世紀から十一世紀の王朝時代の、都市と地方の上層
貴族から下層民衆までを含めた人々の生活を、生き生きと描写している説話集です。
人権意識などなかった時代とはいえ、今でも似たような話が聞かれるのは人の性サガ
なのでしょうか。気になった話を載せましたが、面白い話も多く出てきます。
          (参考図書 「平安朝の母と子  服藤早苗著  中公新書)
 次はたくましく生きてきた女性たちの話を、お伝えしようと思います。
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◆コラムー今年の漢字
 今年の幹事は、その年の世相を表す漢字一文字を決定し公表するもので、1995年に
日本漢字能力検定協会のキャンペーンの一環として始まりました。「いい字一字」の
語呂合わせで、毎年12月12日に発表されています。協会の本部が京都にあり清水寺が
日本を代表する寺であることと、寺の貫主(森清範さん)が協会の理事を務めていた
ことなどが、清水寺で行われるようになった理由のようです。
 1995年は「震」でした。阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件がありました。2001年
は「戦」アメリカ同時多発テロ事件、2002年は「帰」北朝鮮に拉致されていた日本人
が帰国しました。「金」は今までに3回出てきています。2000年シドニー五輪でマラ
ソンの高橋尚子と柔道の田村亮子が金メダルを取りました。2012年ロンドン五輪で過
去最多の金メダルラッシュ、東京スカイツリーの開業、2016年リオデジャネイロ五輪
でレスリングの伊調馨が4連覇したこと、金髪の不動産王ドナルド・トランプがアメ
リカ大統領に選ばれました。
 今年は「令」、平成天皇の生前退位で令和へと元号が代わりました。
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◆編集後記
 今年は世界中で大きな災害がありました。気候変動は温暖化が関係していると言わ
れています。スエーデンのグレタ・トウーンベリさん(16歳)の活動は世界の若者を
動かし政治家にも影響を与えています。環境問題は地球規模で取り組むべき問題で、
未来を担う子供たちに大きな負債を残さないようにすることは、大人の責任です。

 下呂温泉に行ってきました。途中「金山巨石群」を見学しました。岐阜県南飛騨の
山間部で発見された遺跡で、縄文時代の天体観測所(主に太陽)であったことが解明
されつつある所です。日本にもこんな巨石群があったのかと、驚かせられました。
 100号を書き終えたら少し気がゆるんでしまいました。手元にはまだ未整理の資料
がありますので、もう少し頑張ってみようと思っています。
 皆様の「今年」はいかがでしたでしょうか。お身体ご自愛なさり良い年をお迎えく
ださい。
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