子守唄研究室
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ねんねこ通信

タイトル:ねんねこ通信123号
日付:2023/8/26(土)

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 ねんねこ通信 123号 2023.8  http://komoriuta.cside.com/
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◎目次

●はだしのゲン

●守子たちの恋心

●コラム―アーサー・ランサムのロシア昔話

●編集後記
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◆はだしのゲン
 作者は中沢啓治さん、週刊少年ジャンプに1973年〜1987年まで連載されました。彼
自身の原爆による被爆体験(6歳の時広島で被爆)をもとにした自伝的な内容です。戦
中戦後の激動の時代を必死に生き抜こうとする主人公「中岡ゲン」の姿が描かれてい
ます。
 広島市は2013年度に、小・中・高校で平和教育プログラムが始まり、それぞれの学
年に応じた教材を使用していました。ところが、市教育委員会は2023年度、平和教育
の小学生向け教材から、漫画「はだしのゲン」を削除する方針を決めたことが報じら
れました。主人公の生き様が現代の子供たちの実態に合わないのではないか、誤解を
よぶ恐れがあるなどとのことらしいのですが、むしろ、当時の時代時状況を学ぶ教育
的意味があるのではないかと思われます。教育とは、単に教え育むことだけでなく、
教えられたことから自分の考えを培い醸成する力を付けることだと思います。考えた
ことを言葉にしてみんなで話し合う、「はだしのゲン」をそのような教材として使い
続けて欲しいと思います。
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◆守子たちの恋心

・お前行くかよ、わしをば置いて、後へ心は残らぬか
・後へ心は残りはすれど、行かねばならぬ身でごんす
・日にち毎日顔見た罰に、今日は千里も隔てられ
・惚れてつまらぬ他国の人に、末は烏の泣き別れ
・あなた嫌でもまた好く人が、なけりゃ私の身がもたぬ
・わしの思いはあの北山の、落つる松葉の数よりも
・君と僕とは卵の中で、僕が白身で君を巻く      (和歌山県)

・女大学読んではおれど、浮気ゃその日の出来ごころ
・噂立てられ先は人の殿、こんな口惜しいことはない
・男ひとりは天からの与え、男ないのも甲斐性なし
・文を貰ろても字も読めぬ、文は袂で持ち腐り
・待てど暮らせど便りが遅い、思い切戸の文殊さん
・お前弓なら、わしゃ弓の矢よ、はなす間の面白さ
・面白いうち暇やれ取れと、誰が横矢を入れたやら    (京都府)

・俺とお前は御主人がかり、ままにならぬはお互いに
・縁の切れ目に櫛買うてもろて、思い出すぞな くしくしと
・惚れたほの字はほどよいけれど、振られたふの字は腑の悪さ
・どこの途中で振られてもよい、付いて行きたやあの人に
・思い直して来る気はないか、鶴も枯れ木に二度とまる
・鶴も枯れ木に二度とまれども、鶴は枯れ木に巣は組まぬ
・結うておくれな島田の髪に、人が見るよに惚れるよに
・文はやりたし書く手は持たぬ、やるぞ白紙シラガミ文と読め
・書いた文さえ読まないワシが、なんの白紙 読めましょうぞ
・可愛らしそな二皮眼フタカワメもと、わしもなりたや二皮に  (三重県)

・明けりゃ一年、去年の暮れに、泣いて別れたこともある
・泣いて別れた、けさ出た船は、どこの港へつくだやら
・竜田川では紅葉を流す、私はぬしゆえ名を流す     (静岡県)

・来いとゆわれてその行く夜は、足の軽さよ 嬉しさよ
・恋し駒さん、小間物売りに、いたら見ましょに買いましょに
・恋し駒さん、下駄買うておくれ、下駄は焼杉 糸花緒  (兵庫県)

・わしの思いは阿蘇山やまの 朝の霧よりまだ深い ソラヨーイ ヨーイヨー
・あなた思うてかわしゃ夏痩せか 帯の二重が三重まわる ソラヨーイ ヨーイヨー
・思うて見て泣き 見て思うて泣き 思い忘れる暇がない ソラヨーイ ヨーイヨー 
                            (大分県)

 前回は守子たちの嘆きを載せましたが、今回は違った角度からの彼女等の気持ちを
探してみました。現代と変わらぬ「恋心」が見られました。二重瞼を羨ましく思う気
持ちがなんとも可愛らしくて「そうだね」と共感してしまいました。
 採歌した人の考え方の違いがあったのか、土地柄なのか、ここにあげたところ以外
には見つかりませんでした。
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◆コラム―アーサー・ランサムのロシア昔話
 『天国のかじや』に出てくるお話です。この男は仕事をしてもお金を取らないので
依頼者は「あんたに神のお報いがあるように!」と言って、去って行きます。時がた
ち彼は年を取り、死んであの世に行き、やがて天国の門に辿りつきます。そこには門
番がいて問答があり「死んだからここに来たのだ」と答えると門を開けてくれた。彼
は天国の門を通り抜けて楽園に入り、大きくて眩しい光が見えたので近づくと、それ
は金の玉座に坐っている神様でした。神様は「お前の良き行いにたいしてわしの報い
があるようにと、たくさんの人間が祈っておったが、どんな報いを望むのか?」と尋
ねました。彼は「何もいりませんが、その金の玉座に坐ってみたい」と答え階段をか
け上り座り込みました。彼がそこで見たものは、世界全体でした。美しいものばかり
ではなく、人間社会の醜さいやらしさ、悪の限りを見てしまったのです。彼はいたた
まれなくなり、気絶してしまいました。「正しい心の持ち主は、不正に耐えて生きて
おる。だが、人の世に満ちている悪の全てを知って、それに耐えられる人間はおらぬ
。人は、この世の悪の全てを知らぬから、生きていられるのだ。おまえを今までとか
わらぬ善人として地上で生きていけるようにしてとらすぞ」神様の言葉通り彼はこの
地上のどこかで暮らしているそうです。 参考図書 白水社  訳 神宮輝夫
※アーサー・ランサム(1884〜1967)イギリスの児童文学作家、ジャーナリスト
 動乱期のロシアや中国で記者として活動した。代表作「ツバメ号とアマゾン号」
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◆編集後記
 ロシアによるウクライナ侵攻は終焉が見えません。本棚を整理していたら上記の本
を見つけました。神様の言葉が心に残りました。
 ハワイ州のマウイ島でおきた大規模な山火事で、かつてハワイ大国の首都でもあっ
た島西部の町「ラハイナ」は壊滅的な被害を受けたそうです。焼け焦げた街並みは火
災の恐ろしさを見せつけられた思いがしました。

 この夏の暑さは40度を超えることもある異常気候です。それなのに毎年行っている
日除けを、植木たちにかけてやれませんでした。梯子を使ったりするので、私の体調
を考慮してのことです。暑さに耐えている植木たちは「葉焼け」をしていますが、な
んとか生きています。
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