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研究リポート

子守りは何処へ何をしに行ったのか

2007年6月5日 會本希世子

カードの整理をしていて、今までなんの疑問も持たなかった「坊やのお守りは何処行った あの山超えて里へ行った 里の土産に何もろた・・・」の歌詞のあとに、まったく違う内容が書かれていました。そして、「守り」は子守りだけが仕事ではなく、いろいろな用事であちらこちらに出かけていました。

帯を買いに行った

 「おえらのこんもり どさ行った 天童の小町に帯買いに 帯は七尺 値は5百 まけてたもれや3百に おらはまけてもよけれども 家の亭主がまけもさぬ ねんねんねろねろ ねんねしな(山形県)」他に、行き先は「新庄」「虚空蔵コクゾの祭り」がありました。

 「おら家のややの子守りは どこさ行ったと聞いたれば 小浜の町さ帯買いに 帯は七尋 値は八十 五十まけて売ってたもれ 五十の帯買って何にする おら家のややこに締めさせて 締めさせながらも何遊ぶ でんでん太鼓に笙の笛 吹かせるたぶせる踊らせる(福島県)」 他に「保原の祭り」に帯を買いに行ったけれど一文もまけてもらえなかったと言う唄もありました。

 「ねんねんよ おころりよ ねんねのお守りはどこへいた 鹿島のふなとに帯買いに 帯は七尺 値は五十 三文たかいとお買いざし(茨城県)」 他に「値は八十で、八文高いとお買いやる」がありました。

 「ねんねの子守りはどこへ行った あれは下田へ帯買いに 帯はなに帯 小倉帯 絎けてたまわれ 紺屋どの(静岡県)」 「よいよいよいの子守りは どこへ行った あれは三島へ帯買いに 帯はなに帯 繻子の帯 絎けてくだされお婆さま 絎けることは易けれど この子に泣かれて絎けられぬ 泣くな泣くな よういよい(静岡県)」

 「ねんねんかんかん ねんねんかんかん ねんねのお守りはどこへ行った どこへも行かない 帯買いに 帯は七筋 値は八十 八文高いと お買いやる(愛知県)」

 「ねんねんねんねん ねんねんよ ねんねのお守はどこへいた どこへも行かない 帯買いに 帯は七筋 値は八文 八文高いというたげな(兵庫県)」 この子守りは帯を買ったのでしょうか。

餅・団子・飴を買いに

 「おらえの子守りは どこさ行ったべ 粡町に 横丁さぼち(餅)買いに いまぇに来るから 眠て待ちろ オーワィ オーワィ ねないどねずみにひかれるし おきるとおたかにさらわれる オーワィ オーワィ(山形県)」

 「こんのお守りはどこへいった あの山こして里へ行った 里のお土産なんであった ころころ団子に砂糖つけて 誰に遣ろうと買ってきた ねんねまにやろうと買ってきた ねんねまが死んでから今日で七日(石川県)」

 「坊やの子守りはどこいった 暴れの晩でも飴買いに  飴を買ってきて誰にやる ねんねになめらせて 大きく育てて 大きくなったら嫁にやる 嫁さん仕事はなに仕事 粟飯、稗飯、石臼ひき それがいやなら出ておいで(栃木県)」

 「ねんねんよ ねんねんよ 坊やのおこもりどこへ行った 尾島の宿屋へ餅(アンモ)買い 餅を買って、魚買って、誰にくれよう 坊やのよい子にみなあげよう(群馬県)」

 「ねんねんお守りはどこにいた 八幡山へ餅(アンモ)買いに 餅買ってやる 買って誰にくれよう 太郎のよい子にくれましょう くれて育てて孕ませて 孕んだ嫁の子が機(ハタ)が上手だとさ 去年の三月はたたてて 今年の三月織り切れてそれを市へやったらば 二朱と二百になりました(埼玉県)」

茶・乳を飲みに

 「ねんねがお守りはどこ行った 大喜多の宿へ餅買いに お餅はいくら買ってきた おざるにいっぱい手に七つ 七つのお餅を誰に食わせる 「ねんねんやあ こうこうやあ ねんねんやあ こうこうやあ ねんねん守りはどこへ行た あありゃお里へ茶茶飲みに 茶茶飲んだらはよもどれ はよもどって子をすかせ(アヤセ) 子をすかさにゃ去いね去ね ねんねんやあ こうこうやあ(広島県)」

 「ねんねんや こうこうや ねんねん守りはどこ行った ありゃ里へ乳飲みに 乳を飲んだらはよ戻れ 戻る道にゃもんがいる 去ぬる道にゃ犬がいる(広島県)」

 「ねんねこせい ねんねこせい ねんねの子守りはどこへ行った あの山越えて里へ乳飲みに 乳を飲んだら早うもどれ 里のみやげに何もらった でんでん太鼓に笙の笛 笙の笛 ねんねんころころねんねこせい ねんねこせい ねんねこせい(北海道)」

 「守りさどこいく 白足袋はいて 間々の観音へ乳もらい ねんねんねんと ねる子はかわい 起きて泣く子は わしゃきらい(愛知県)」間々観音は小牧市にあります。乳が出なくなった時、お参りすると泉のように出るという言い伝えがあります。

魚に関しては

 「ねんねのお守りはどこに行た 籠を持(タガ)って魚(トト)買いに その魚買ってなんすんな ねんねにあげるな 買ってやる ねんねんころころ こんころや(山形県)」

 「ねんねこよ こんころよ こんこの子守りはどこいった 川中島へ魚(トト)買いに 今に来ずになな泣いと ねろちぼよ ねんねこほい(長野県)」

 「ねんねのお守りはどこへ行った 南条長田に魚(トト)買いに その魚買うて来て なにするだ ねんねにあげよと買うて来た(千葉県)」

 「よい子の守りはどこへ行った 浜松街道へ魚(トト)買いに 魚をいくつ買って来た 三つも四つも買って来た そんなに魚をなににする 明日の飯(マンマ)の菜にする(静岡県)」

 「坊やのお守りはどこさ行った あの山越えて鮎釣りに 鮎を何匹釣ってきた 誰に食わせるって釣ってきた(福島県)」

 「ねんねん子守りはどこ行った ありゃ隣い魚売りに 茶茶飲んだらはよもどれ  はよもどって子をせかせ 子せかさんにゃ去んでくれ どっち通て去のうか 上通りゃ雷が降る 下を通りゃ霜が降る ねんねんやねんねんや(広島県)」

 長崎県福江市では、川に落ちて鯰を捕まえてきた子守りもいました。

鳥追いに行った

 「ねんねこせい ねんねこせい ねんねが守りはどこへ行った かちかち山へ鳥追いに 鳥に追われて泣いてきた(新潟県)」

 「西の町から東の町まで うたって歩くは守りの役 坊やの守りはどこへ行った かちかち山へ鳥追いに 鳥(トット)に蹴られて泣いて来た(茨城県)」

 「ねえろねえろ ねんねしな ねんねの子守りはどこいった かんかち山へ鳥追いに 鳥に蹴られて泣いて来た(静岡県)」

 「坊やのお守りはどこへいた おちおち山へ鳥追いに 鳥に蹴られて泣いて来た(兵庫県)」

 「ねんねが守りはどこへ行た あの山越えて鳥追いに 鳥を何匹追うてきた その子に食わせて太らせて ほうらねえむれ ねえむれよ ほうらねえむれ ねえむれよ(大分県)」

仕事に行った

 「ねんさいよ さいねこよ ねんねのお守りはどこ行った 茶の木原へ茶摘みに はよもどって子をすかせ 子をすかさんにゃ去ね去ね 去ぬる道にゃポイがおる もどる道にもワンがおる ねんさいよ さいねこよ(島根県)」

 「ねんねんよ こうこうよ ねんねん子守りはどこ行った あれはお里へお茶摘みに ちょいと摘んだらはよ戻れ 早う戻らにゃ去ねよ 去んだらなにを食おうか 棚の箸を食うやれ 柳の箸は堅いよ かたけりゃ焼いてやろうよ 焼いても煮ても堅いよ(広島県)」

 「おらのお守りはどこいった あちらの田圃へ穂(ホッポ)拾いに ほっぽ三升ばか拾ってなにするだ つぶしてこなして帯を買う 帯はなに帯 小倉帯(静岡県)」

 「ねんねしな ねんねしな ねんねのお守りはどこへ行た あの山越えて穂拾いに 穂はなにほど拾った 二升も三升も拾った その穂はどうしたか その穂は酒をつくった その酒はどうしたか その酒は犬がねぶった その犬はどうしたか その犬はうち殺した その皮はどうしたか その皮は太鼓をはった その太鼓はどうしたか 上の宮でとろすことん 下の宮でとろすことん(宮崎県)」

 「赤ちゃんのお守りはどこいった 柳が沢へ麦まきに 何升何合まいて来た あとの残りはどうやった 次郎どんにひとくち 太郎どんにひとくち いっさいがっさい飲ました(東京都・埼玉県)」

 「おらが子守りはどこへいった 椎の木芝原へ麦蒔きに 麦は何合蒔いて来た 一升五合蒔いて来た 一升五合の残りをば 茶の木の間に蒔いて来た(静岡県)」

 「ねんねんころりん ねんころりん ねんねのあやはどこへ行った ねんねのあやは麦刈りに あの山越して山越して

 あの坂越して坂越して 刈ってひろげて束にして 急ぐ足元日が暮れる 心はうちに身はここに 帰れば戸音に眼がさめる ねんねんころりん ねんころりん(石川県)」

 「ねんねんころりん ねんころりや 坊やのお守りはどこいった 坊やのお守りはどこいった かちかち山へ芋掘りに 芋がないと泣いてきた こからどこまで泣いてきた お寺の前まで泣いてきた お寺の小僧さん何してた 立ったりねまったり お経よんでた(新潟県)」

 「ねんねこっころ誰だかや ねねして起きたらなにくれべい 赤い飯(マンマ)に魚(トト)かけて さっくり三杯召し上がれ ねんねの子守子はどこいった あの山越えて里いった お襁褓(シメシ)洗いに里いった 里の土産になに貰ろた でんでん太鼓に笙の笛 起きゃがり小法師に犬張子 寝ずば鼠に引かれべぞ 起きたらお鷹にさらわれべい(福島県)」

 「ええ子の子守りはどこ行った 河原で襁褓を洗いに 襁褓どこに乾(ホ)いてきた お寺の前の柿の木へ つっかけ さっかけ 置いてきた お寺のお婆はなにょなさる 米(コンメ)を搗いたり茶茶煮たり おひまにゃお客にお茶あげる(静岡県、愛知県)」お寺の和尚さんは「懺法よんだりお経を読んだり」とも歌っています。

 「ねんねんようよう おころりよ ねんねのもうやはどこへ行た あっちのあっちの木曽川で お襁褓(シメシ)やむつきを洗いに あぁらい川で洗って さぁらし川で晒して お寺の茶の木にかけといた お寺の庫裏さま持ってきゃぁた 金茶になあれよ 金茶になあれよ(愛知県)」

 「ねんねしなされ 朝おきなされ ねんねのお守りはどこへいた ひと山こえて二の山へ 父さんの使いにいったげな もうやの土産になにもろた 太鼓にお笛でぴいどんどん(愛知県)」

 お父さんのお使いで何処に行ったのかは分かりませんが、お父さんにも様々な事情がありました。

 「おむく(女の子の名前)の父さんどこへ行った 寒田の金山 金掘りに 金が掘れたか掘れぬやら 一年待てどもまだ見えぬ 二年待てどもまだ見えぬ 三年ぶりの霜月に おむくに来いとの状が来た そうりゃねんねん ねんねんよ そうりゃねんねん ねんねんよ(大分県)」

 「坊やの父さんどこへ行った あの山越えて谷越えて なんなん長崎 かね掘りに かねは掘らずにあと見やる あとにゃ蓮華の浜が咲き 先にゃ時雨の雨が降る(福島県)」

 「お守りが父さんどこへ行った 長崎 長崎 金掘りに 金は掘らずに後見れば 後にゃ時雨の雨が降る(山口県)」

 「ようかい ようかい ようかいよ おぜが父ちゃは何処行たか あれは屋久島 かま売りに かまは売れぬか まだじゃろか 二年たってもまだ在(ワ)せぬ 三年たってもまだ在(ワ)せぬ 三年三月に状が来た(鹿児島県)

 「ねんねやねんねや おねんねや 坊やの父さんは馬買いに 馬はなに馬 うさぎ馬 ほろかけ車ほしいなら あす朝曳かせて進ぜましょう(愛知県)」

 「○○の父さんどこ行った かつかつ山へ鳥追いに 鳥を何匹追って来た 三十三匹追って来た その鳥もたせて遊ばせろ(静岡県)」

 「ねんねんころりよ おころりよ――ォ 坊やの父さんどこへ行った――ァ あの山越えてとと(魚)釣りに――ィ ととは何匹釣ってきた――ァ 坊やが食べるほど釣ってきた――ァ 坊やによいとこ食べさせて――ェ 猫には骨でもしゃぶらせろ――ォ だからよい子だなんあんしな――ァ ねんねしなしな ねんねしな――ァ(千葉県)」

 「坊やの父さんどこへ行た あんまかさんように舟買いに 舟はないので馬買うて 馬はどこへつないだか 一本松の橋の下 なにを食わせておいたのか 去年の稗がら今年の粟がら 十把ばっかり取り食わせ おろろん おろろん おろろんよ(熊本県)」長崎県でも同じ内容の唄がありました。

 「ホーラ ホーラ ホーラヨ ぼんがえんお父っちゃんな どこん行きやった おかん先 焼酎飲んけ 焼酎飲んで酔くろうて 正月どんのべんじょ(着物)を汚らけて むらざけ川で洗やったどん 干すとこがなくて草っ原へ 干しちょ きゃったらのっ(野火)がいて ひん焼えっしもっ ちょっしもた ホーラ ホーラ ホーラヨ(宮崎県)」

 「ねんねんこまり ねんこまり 坊やが父さんどこへ行た 海山越えて里越えて 坊やがお土産に鬼の首(宮崎県)」 和歌山県にも同じ歌がありました。 「おれのおんぼこ(赤ん坊)ァ ねんねこへ おぼのお父さはどごさ行た お父さ鳥コ町さ鳥コ買ねた お母さ鰈コ町さ鰈コ買ねた 兄の馬鹿者柴コ刈ねた 柴にはんずかれで 七転び もひとげり転べば 八転び ねろじゃ ねろじゃ ヤイヤイヤイ(青森県)」

お母さんも出かけています

「ねんねんころりよ おころりよ 坊やはよい子だねんえんしな 坊やのかあさんどこさ行った 保原の祭りさ帯買いに 帯はなんぼと聞いたれば 帯は七尋 値は八十 三十五文におまけやれ いやいやそのようにまけられぬ 坊やのこどならまけてやる(福島県)」 山形県でも「荒砥の町へ帯を買いに」行っています。

「ねんねの母(カアカ)はどこ行った からすの山へ飯(ママ)炊きに 飯が煮えたらはよござれ 赤いお椀に飯よそて 白いお皿に魚(トト)よそて 母のみやげはなんじゃいの ピッカラガラガラ笙の笛 鳴らいてみたらば鳴らなんだ(石川県)」

「ねんねろや こんころや こんころ母コはどこさいった 後ろの川っコの小川っコさ 襁褓(モドキ)あらいさ ねんねろや こんころや(岩手県)」

お母さんは帰らぬ旅に・・・

「坊やのお母さんはどこ行った 海山越えて谷越えて 八重の潮路を隔つとも この世を渡る旅ならば また逢うこともあるべきに 帰らぬ旅の旅衣 でんでん太鼓に笙の笛 みやげを持たんよしもなし(群馬県)」

沖縄県では

特別視するわけではないのですが、方言のままでは内容が分からないので、意訳された唄を記載することにしたからです。

「お母さんはどこへ行った 那覇の市場に布を売りに 布を売って戻りには綛を買いに 綛を買って戻りには茶を買いに

「お前の母さんはどこ行った 山羊の草刈りに 山羊の好きな草は じんきの若草 お前の父さんはどこ行った 牛の草を刈りに 牛の好きな草は まうべしっぴの葉だ」

「お前の母さんは 大きなお芋を掘りにいらっしゃったよ お前の父さんは 南の海に行かれて 大蛸をとりにいらっしゃったよ 眠っている子には 大蛸の皮をむいて 手をまるごと食べさせるよ 起きている子には 虫食い芋と小あじの苦いはらわたを食べさせるよ」

「坊やの母さんはどこへ行った 大畑に行った 何しに大畑に行った 大畑に行って芋を運びに 坊やの芋は美味しいもの 子守りのものはまずいもの 坊やの父さんはどこへ行った 役所に行った 何しに役所へ行った 役所へ行って俵を頂戴しに 我家の稲村を大稲村にする 後ろの稲村を高稲村にする」

まとめにかえて

 里の土産は、でんでん太鼓に笙の笛やオモチャのような物などと勝手に決めて、何の疑問も持っていなかったのですが、ふと手にしたカードに「帯を買いに行った」「鳥を追いに行った」などと、思いもよらなかった言葉が眼に入ってきたのです。選り分けてみると、面白いように様々な場面が現れてきました。家族の様子や仕事のこと、亡くなったことをそれとなく唄で伝えているのもあり、うたわれている背景に思いを巡らせました。

まだ見落としたカードがあるかもしれません。他の機会にでもお知らせいたします。


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